25 / 159

第25話

「福岡さんは、お前に戻ってきてもらいたがっている。だが、今回の、お前が広瀬に撃たれて重傷を負ったのは、仕事の範囲を超えて近藤理事の案件を追わせた自分に責任があると考えている。だから、お前が橋詰のところにいって、経産省に行くのも止めなかったんだ」と竜崎は言った。 東城は話の中身がわかってきてうなずいた。 「竜崎は、どう思うんだ?俺が、戻った方がいいのか?」 竜崎は、口を開いた。複雑な表情を浮かべ、しばらくして聞き返してきた。 「今日、あのホテルにいたのは広瀬のことを捜してたからだろう」 東城は、あいまいにうなずいた。 「そうか」と竜崎はつぶやいた。 しばらく、竜崎は黙って車を走らせていた。 そしてまた聞いてきた。「手がかりはあったのか?」 「いや」と東城は言った。今日には見つかるはずだったのだ。 「そうか。残念だったな。だけど、捜索は継続するんだよな」と竜崎は言った。それから言葉をつなげる。「お前がもし福岡チームに戻ってきたら、また、前と同じように働けるだろうか」と彼は聞いてきた。 どんな返事を求められているのか東城にはわからなかった。 謎のような質問に、竜崎は答えを示さなかった。 その代わりに彼は東城の返事を待たずに言った。 「東城、お前は今の仕事をしている間に、警察庁の橋詰はそれなりの部署をお前に用意するだろう。警察庁内か警視庁のどこかかはわからないが。僕には、その方がよいように思える。福岡さんは、お前を必要としているが、戻っては来ない方がいい」 「そうなのか?」 竜崎から戻るなと言われたことはショックだった。 彼は、いつでも、何があっても自分と一緒に働きたいと言ってくれると思っていたから。 「ああ」と竜崎はあっさり言った。 自分が撃たれたことで、竜崎は必要以上に責任を感じていた。 あのことが、彼の気持ちを変えてしまったのだろうか。 竜崎は東城に言った。「福岡さんには僕から適当に答えておく。それから、今日のことでもし所轄から再度出頭しろとか命令があったら、僕に連絡をしろと伝えてくれ」 その後は無言だった。しばらくして車は東城の自宅前でとまった。 東城は降りる前に竜崎に聞いた。 「なあ、俺と竜崎は、まだ、友達なんだよな」言った後で小学生のガキがするようなの質問だな、と思った。 竜崎は、まっすぐこちらを見てうなずいた。「もちろんだ。東城がそう思っている限りは、ずっと」 東城は車を降りた。竜崎は運転席からかるく会釈をすると車を出して走り去っていった。

ともだちにシェアしよう!