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第27話

再び手の中のスマホが振動した。宮田からだった。東城は電話をとった。 「はい」 「東城さん」と宮田は安堵の声を出した。「よかった。今どこに?」 「今は家だ。何度もすまなかった。竜崎さんに連絡してくれたんだってな」 「俺じゃあどうしようもできなかったんで。いい考えもなくて。佳代ちゃんに相談したら、すぐに竜崎さんに言うといいって言ってたんです。竜崎さんなら、東城さんのために尽力してくれるだろうって」 「相変わらず判断がすごいな」と東城は言った。 「ホテルで倒れてた男のことは、まだわかっていません」と宮田は東城が質問する前に言った。 「東洋人だった。日本人かもな。アンディ・ミツモリとか」 「そうだとは思います。ニュースにはまだ出ていません。怪我の具合も、身元もまだわかりません。あそこの所轄には知り合いがいるんですが、俺が今探りを入れるとかえって面倒なことになりそうなんで、しばらく時間をおきます」 「ああ。そうだな。あの男、頭から血はでていたが、死んではいなかった」 「時間はかかりますが、その男のことは俺が調べますよ」 東城は礼を言った。宮田はどういたしまして、と言っていた。 「東城さん、広瀬は、」と宮田は言う。 「わからなくなったな。偽造パスポートで入国しているから、ホテルに警察がきたりして、逃亡しているのかもしれない」 「まだ、日本にいますね」と宮田は言う。「怪我してた男に接触してくる可能性もありますね」 東城は同意した。そうだ。まだ、全てが終わったわけではないのだ。まだ、チャンスはある。 宮田との電話を切った後、通話中に着信があったことに気づいた。 忍沼からと警察庁の橋詰から。東城がつかまった所轄から情報が回ったのだろう。 そして、見知らぬ電話番号がいくつか。 誰だろうとかけ直してみたら経産省の上司からだった。 彼も早朝におこされて驚いているようだったが、意外と冷静で、東城の居場所や無事かどうかを聞いてきた。 警察内部のゴタゴタで東城が異動してきたから、その延長線上のゴタゴタなんだろうくらいに思っているのかもしれない。 彼からしたら東城はやっかいなお客さんだ。やっかいだと最初からわかっているから、多少のことは平気なのだろう。 他の電話も推して知るべしだったので、自分からかけ直すのはやめた。 ソファーに腰を下ろし、次になにができそうか考えることにした。

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