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第31話
食事をし終えると、これからどうしようか、と考えた。
まずは、もっとよく知っている街に移動しよう。幸い、電車はまだ動いている時間だ。
どこに行こうか。
自分の家に帰ろうか。東城と暮らしていたあの美しい家。緑の庭木が茂り、屋根に上って景色を楽しむことができた。広瀬にとっては夢の家だ。
あの家に東城はいるだろうか。
もし、仕事で忙しくても、待っていれば彼は帰ってくるだろう。
家に戻りたかった。あそこで、彼の顔を見ることができれば、それでいい。
だけど、あの追いかけてきた男。
どう考えても堅気ではない。ヤクザだろうか。誰だろう。
正体も目的もわからない男に追われたのに、あの家に戻るのは危険だ。
広瀬が行くことで東城の暮らすあの家や彼の一族に不穏なものを寄せ付けるようなことはしたくない。巻き込まないようにしなければ。
しばらく考えた後で、広瀬は、立ち上がった。
会計ではためらうことなく光森のクレジットカードを出した。店員はクレジットカードを受け取り何の疑いもなく決済をすませた。
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