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第42話
東城の腕の中で広瀬は目を閉じた。彼だ。温かい体温が服越しに伝わってくる。安心して身体を預けることができるただ一人の人。
それにしても、会ったとたんに抱きしめられるとは思わなかった。
怒っていないのだろうか。
広瀬が彼を裏切り、あまつさえ銃で撃ったというのに、まるで気にしていないようだ。
長い間、ずっと想像していた展開とまるで違っていた。
電話口で何を言われても謝ろうと思っていたのに、その用意した言葉など全く不要だった。東城は電話で広瀬を確認すると、その後の言葉を待たず矢継ぎ早に、どこにいるのか、そこで待っていることはできるのかと聞いてきたのだ。
おまけに会ったらこんな風に抱きしめられて「なんだってこんな汚いとこにいるんだよ」と腕の力を強くする。「どうして、うちにすぐ帰ってこなかったんだ」拗ねたような口調だった。
広瀬と軽い喧嘩でもしてちょっと家出されてるみたいな言葉だ。
とまどいながら、「追われていて」と広瀬は答えた。
「どういうことだ?誰に追われているんだ?」
「泊まっていたホテルで知らない男が」
「ホテル?男が殴られて倒れていたな。その関係なのか?」
広瀬はうなずいた。どうして東城が知っているのかはわからなかった。
「犯人がお前を追っている?」
「犯人というか」と広瀬は答えた。殴った犯人というよりは事故に近い感じだったんだけど。
「わかった」
東城は広瀬の話を最後まで聞かなかった。腕をとって歩き、駐車場に連れて行った。
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