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第44話

着いたところは海岸近くだった。灰色のぶ厚い塀に囲まれた見たこともない一戸建てだ。 地下にある駐車場に入るのに東城は指紋認証をしていた。 車を降りると東城は広瀬の腕を片手でそっと握り、家の中に案内した。 駐車場から家の中に入るのにもセキュリティの認証システムが入っていた。かなり用心深い人の家のようだ。 玄関から入った家の中はだだっ広く、全体的にガランとしていた。必要な家具は並んでいたが、誰かが住んでいるという気配のない家だ。 本棚に本はなく、壁には一枚の絵もカレンダーさえもない。写真や飾りの置物といったものもない。 東城は部屋の中を見回しながら廊下を抜け、ためらいなく入っていく。広瀬も彼の後に続いた。 「ここは、親戚の家だ」と東城は広瀬に説明した。「数年前に亡くなった叔父が、俺に使っていいっていって残してくれたんだ。この家のこと知ってる人間は俺の親戚でもほとんどいない」 広瀬はうなずいた。 こんな隠れ家があったとは今まで知らなかった。いや、もしかすると昔東城が説明してくれた彼の財産目録には入っていたのかもしれない。 誰もいない家で、空調の音だけがかすかにした。

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