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第49話
リビングに戻ると東城が浴室から出てきていた。
「なにか探してたのか?」と聞かれた。
広瀬は首を横に振った。それから告げる。「東城さん、この家のドアが開きません」
東城は全く慌てず、平然とうなずいた。当たり前のように言った。
「そうだ。この家はセキュリティで中からも自由には開かないようにしているんだ」彼の目が広瀬を捉えている。「出ようとしたのか?」
「ドアがあったから開けてみようとしただけです」
「なんで?」
少し問い詰めるような口調だ。それには答えなかった。
「一度はいると出られなくなるんですか?俺たち、この家に閉じ込められているんですか?」
「え?ああ。そうか。説明が必要だな。この家は、俺しか開けられないんだ」
その説明にとまどっていると、彼は、説明を追加した。「ここ、叔父の家だって言っただろ。叔父は高齢で若い女と結婚したんだ。相手は20代の水商売あがりの女だった。新婚生活のために叔父はこの家を建てて自分の認証がないと誰も入れないし出られないセキュリティを入れたんだ。若い妻が好きに外出すると、浮気するか逃げ出すかとでも思ったんだ。頭がおかしかったんだな」
監視カメラも妻を見張るためだったのだ。広瀬は背中がこわばるような感じがした。
「新妻にしてみたらいい迷惑だったろう。この家作ってすぐに叔父は亡くなって、未亡人はこの家からさっさと出て行った。家は俺のモノになったんだけど使い道もないから、管理人入れて、人に短期貸ししてるんだ。地方から出張してきてるサラリーマンとか、観光客とかに」
それで、部屋は整い、ホテルのようにベッドメイキングされて、タオルや部屋着が置いてあるのだ。
東城はリビングのソファーに腰を下ろし、説明を続ける。「お前が追われてるって言うから、ここに来ることにした。ここなら安全だ。この家は、俺の認証がないと入ることも出ることもできないようにセットし直してある」
「出られないんですか?」広瀬は再度質問した。
東城は、自分の前に立つ広瀬を見上げ、少し笑った。広瀬が誤解していると思っているのだ。
「大丈夫だよ。二人で閉じ込められてるんじゃないんだ。解除すればいつでも出られる」口調も優しい。
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