50 / 159

第50話

どうしようか。東城は何とも思っていないのだろうか。 それとも気づかないふりをしているのだろうか。 「東城さんが、解除したら、ですよね」 東城は当たり前のようにうなずいた。「お前が、外に出る必要はないだろ。ここで、身体を休めた方がいい。お前、痩せたし、顔色もよくないから」 「そうですけど」言葉が上手く出てこない。東城に自分の気持ちをどうやったら説明できるのか。 自由に出られないのは嫌だった。 ぶ厚い壁の家が自分を包んで離さないような気持になる。 口ごもる広瀬に東城は言った。 「ここにいればいい。ホテルで傷害事件を起こした男に追われてるんだろう。ここなら安全だ。それから、お前を追っているのは、ホテルのその男だけじゃない。警視庁もお前から事情を聞きたがっている。大井戸署も、近藤理事の殺人事件関係で、警視庁や山梨県警、検察も関心を持ってる」 それはわかっている。 東城の言う通り隠れている方が安全だ。 だけど、大井戸署のこととなると話は別だ。 「もし、大井戸署に事情を聞かれるのであれば、きちんと話をします」 全ての責任が自分にはある。起こしたことは償わなければ。

ともだちにシェアしよう!