52 / 159

第52話

東城は言葉を続ける。 「それから、お前の両親を殺した堀口は、まだ、起訴もされていない。お前に撃たれた後、入院したんだが、退院して、今、どこで拘留されているかはわからない。そもそも、堀口関係の事件は、全く表に出てきていない。これからもわからないままかもしれない。お前は、逮捕拘留されて、拘置所で堀口を探して何かしようと思っているのかもしれないけど、それは無理だ」 広瀬は思いもよらない東城の話に愕然とした。 東城は話を続ける。「俺のせいで奴を殺せなかったんだから、ここにいさせるってことは、俺がまた邪魔することになるんだけどな。あやまっても謝りきれないけど、でも、お前がまた、どこかに消えていくのは絶対に嫌なんだ」 「東城さん」広瀬は勇気を出して東城に手を伸ばした。 指が彼の手に触れた。 東城はこぶしを握ったままだ。緊張で身体がこわばっているのがわかる。 「ごめんなさい」と広瀬は言った。 東城がこちらをむいた。 「なんでお前が謝るんだよ」 「謝らないといけないことがいっぱいあるので、どこから言ったらいいかわからないんですけど」と広瀬は言った。 胸の奥からせりあがってくる。 涙が目の中で膨らみ、ポツポツと服に落ちた。声が震える。 でも、話をしなければ。彼に謝らなければ。

ともだちにシェアしよう!