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第55話
東城は、管理人に電話をし、デリバリーを頼んでいた。管理人はこの家から車で5分くらいのところに住んでいるらしい。自分のお勧めの店の料理を全部まとめて配達してくれることになった。
待っている間に東城と広瀬はキッチンに何があるのかを見て回った。食事に使える食器やカラトリーはそろっていた。
冷蔵庫の中には水と氷は豊富に入っていた。東城はグラスに水をついで広瀬に差し出した。
「飲むか?お前、朝から何も口にしてないだろ」
広瀬はグラスを受け取り口をつけた。冷たい水が喉を通り、身体を潤していく。
東城は自分でも水を飲んでいる。「さっぱりするな」と彼は言った。
広瀬はうなずいた。
キッチンはダイニングとつながっていて、4人掛けの黒いテーブルと黒い椅子が並んでいる。
中を見回して東城がつぶやいた。「それにしても殺風景な家だな。前に来たときはそれほど気にならなかったんだけど、こうやって自分が寝泊まりしようと思うと、何もなさ過ぎるのが気に障る」
管理人任せで何もしてなかったけど、少しは手を入れようかな、と彼は広瀬に言った。「絵でも飾るか、管理人さんに頼んで花でも活けてもらおうかな」
しかし、この家に花瓶なんてものなさそうだな、とも言った。
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