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第64話
東城は呆れた。
「菊池は、どうかしてるんじゃないのか。わざわざ俺が言う必要もないくらいどうかしてるけどな。そもそもそんな危険なものを売り出す意味も分からない。それに、そのデバイスは、元々は滝教授の開発したものだろう。設計図を盗んで売ろうとしているだけだと思うと、さらに菊池の異常さが増す」
「デバイスについては、滝教授のそのままじゃなくて、使いやすくするために手はくわえたそうですけどね」と広瀬は答えた。「盗んだってことに変わりはないですけど」
広瀬は話を続けた。
菊池の会社で出会った光森という男のこと。彼が連れてきた投資家のビューレンとともに日本に来たこと。
ホテルで起こった光森が男に倒されて気を失った事故。倒した見知らぬ日本人の男が自分を追いかけてきて、ホテルを逃げたこと。
そこで東城は聞いた。「追いかけてきた男に覚えは?」
「全くないです」と広瀬は答えた。それから、質問してくる。「東城さんは、どうして、光森がホテルで殴られていたことを知っているんですか?」
「ああ、そうだった。その話をしてないな。お前を探しにホテルに行ったんだよ」と東城は答えた。
それから、今度は東城が広瀬に話をした。広瀬を探していたこと。
ハニートラップの梔子がもたらしてくれた広瀬の情報。忍沼や宮田たちに協力してもらったこと。
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