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第70話
土曜日のため、ショッピングモールは人が大勢いてにぎわっていた。家族連れや学生、カップルなどが食事をしたり買い物をしたり楽しんでいる。
広瀬は東城の後ろをついて歩いた。東城は、事前に検索した店を何件か覗いている。
それから、早速、自分がよいと判断した服屋に入って行った。メンズの専門店だ。
全身この店の服を着ているのマネキンのような若い男の店員がすぐに近づいてくる。髪型は今風にカットしていて、すっきりした小顔の男だ。
いらっしゃいませ、と言い、次いで「なにか、お探しですか?」
東城はうなずいた。
「背の高い方のもサイズは揃えていますので、おっしゃってください」店員は心配無用というように東城を見上げる。
「いや、俺のじゃなくて、連れのを探しているんだ」と東城は言い、後ろに立っている広瀬を示した。
店員は広瀬に会釈をした。なぜか、彼の表情がぱっと明るくなった。
「この方ならどんな服でもお似合いですよ」と彼は言った。
東城は、どういう意味だよ、と店員に聞こえないくらいの声でつぶやいている。俺には似合わない服があるってことか。
広瀬のことを褒めてるんだろうけど、同時に自分の悪口を言われたような気がしたのだろう。
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