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第73話

食品をうず高く積み上げながら、これから、あの家に何日いることになるのだろうか、と広瀬は思った。あまり考えたくはないが、そう長くはいられないだろう。 東城が野菜や肉を買おうとしているのを広瀬は止めた。「誰が料理するんですか?」 「料理って、カレー作るくらいだぞ」 「その、カレー、を誰が作るんですか?」 広瀬は、一人暮らしが長かったのでカレーくらいいくらでも作るが、自分が作ったら東城があれが足りないとかごちゃごちゃ言ってきそうだ。そうでなければ、ただのカレーにすごく美味しいとか絶賛してきて、それはそれでうっとうしい。 難色を示す広瀬になにをさっしたのか東城がいう。 「そう心配するなよ。俺が作るから」 「東城さんが」と広瀬は独り言のように繰り返した。 東城はカレールーのパッケージの裏を見せる。 「この通りに作れば、誰でも作れるのがカレーじゃないのか?」 作ったことないくせに、と広瀬は思った。 「野菜は皮をむいたり、切ったりしなきゃならないんですよ」 「バカにするなよ。それくらい知ってる。小学校の頃に調理実習で班長だったんだ。あの時、カレー作った」 「そこまで遡らないと実績が出てこない人が、カレー作りについて言えることは何もないですよ」と広瀬は言い、東城からカレールーをとりあげた。 カレーはレトルトで十分だ。 レトルトカレーをどさどさと適当にカートに入れていく。 東城のようになんでも吟味していたら買い物の時間がいくらあっても足りないのだ。

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