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第74話
生活に必要な買い物が終わり、大量の荷物を車に全部詰めた。このままショッピングモールを後にするのかと思ったら、運転席に一度入った東城が、あ、と言って車を降りた。
まだ、買うつもりなのだろうか。これ以上何を、と不審に思った。
「家の中、殺風景ってこと思い出した」と東城が言った。「せっかく楽しい買い物から帰ってあの家だと気が重いだろ」
「どうするんですか?」
「うーん」と東城は言った。「プロジェクターでも買うか?」
「プロジェクター、ですか」まさかそんな機器を思いつくなんて。「プロジェクター、どうするんですか?」
「部屋の中に映像流す。環境ビデオみたいなのとかきれいそうじゃないか」
広瀬は考えてみる。
体験したことがないので実際にどうなるのかはわからない。家の中の壁が海やジャングルみたいになるのだろうか。そんな壁に囲まれて二人で過ごすのは面白いかもしれない。
「映画みるのもいいだろ」と東城が続ける。「ステレオセットもそろえて、臨場感のあるホームシアターにするんだ。サッカー見るのもいい」
そういいながらショッピングモール内の家電店を目指していく。
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