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第76話

プロジェクターについて広瀬とたわいもない話をしていたら、色とりどりの花が咲き誇っている花屋が目にはいったのだ。 あの花の中に広瀬がいたらどれほど綺麗だろうと東城は思った。 広瀬もすぐに自分の後をついてきた。 広瀬は花や緑がよく似合う。住んでいた家でもよく庭に出てのんびりしていた。 庭木に顔をよせている彼の風情を東城はいつも愛しく思っていた。同じ人間だけれど、自分よりもどこか自然に近い存在なのかもしれない。無表情で感情を見せないが、惹かれて離れられなくなるほどに美しいのはここに咲く花と一緒だ。 東城は店員に家の中に飾る花を探していると相談した。店長の名札をつけた同年配の男性が、それなら、といって色々と揃えてくれる。 ハサミを器用につかい、手際よく花の茎や枝を切って整えていく。 広瀬は子どものようにその様子を感心して見つめていた。あまりじっと見ているので、店長の方が照れて顔を赤くしていた。 二人でもてるだけの花瓶、花束、小さな鉢植えを買った。 お届けしましょうか、と提案されていたがそれは丁重に断っていた。今いる場所に、人が出入りするのはできるだけ避けたかったのだ。 数種類作られた花束はどれも季節の花で、リクエスト通り家の中であまり主張しないように、色合いは控えめにしてもらった。 広瀬は自分に渡された大きな花束の香りをかいでいる。うれしそうな笑顔になった。 「毎日水をかえてあげると長持ちします」と店員が広瀬に花の扱い方を書いた紙を渡しながら説明した。

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