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第77話

それから、二人でショッピングモールを歩いてもう一度駐車場に向かった。 広瀬に視線を送ってくる人が大勢いた。誰だってお洒落な服を着て大きな花束を抱えて歩く美青年がいたら、何ごとだろうと思うだろう。 こんなタイミングでもなければ、彼をショッピングモール中連れて歩き、自慢しているところだ、と東城は思った。 駐車場で車に花を入れると、車内は花の香りで包まれる。 「これで、家の中も少しはましになるな」と東城は広瀬に言った。 広瀬が花束を手に持ったまま助手席に乗り込んできた。花を傷つけまいと慎重にそっと抱えて大事にしている。 横顔に花の陰がかかる様子がとても美しかった。 東城が車を出しながら彼に告げた。 「そうやって花束を持ってるの、似合うな」 広瀬は、東城に目を向けてきた。 透明な目に花の色が映っている。花束と広瀬が溶けあうようだ。 東城は手をのばし、広瀬の頬に触れ、それから、形の整った唇に自分の唇を合わせた。 柔らかい感触だった。 広瀬も顔を傾け、東城にキスを返してきた。

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