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第79話
東城がむこうの方で電話で話しをしている声が聞こえてくる。
宮田と連絡をとっているのだ。
彼は、自分から宮田に電話をかけ、広瀬に会ったことや今は海沿いの別宅に隠れていることを説明していた。
宮田は、電話の向こうでかなり興奮しているようだった。
東城が電話口で宮田に同じ説明を何度も繰り返している。
時々冷静になるようになだめていた。その話し方から宮田の混乱している様子が広瀬には手に取るようにわかる。
彼はずっと心配してくれていたのだと東城に聞いていた。思えば彼は同僚という立場を超えて、広瀬のためにいつも動いてくれていた。
しばらく話をした後、電話を終えて東城が広瀬の方にやってきた。
「宮田は明日休みらしい。こっちに来るって言ってた。お前の顔見るまで、本当にここにいるのか、信じられないそうだ」と東城は言った。「そのくせ、電話代わるかって聞いたら、それはいい、って言うんだ。声を聞いたら泣くかもしれないからやめとくとか言ってた」
広瀬が聞いた。「宮田はこの家に来るんですか?」
「ああ。後つけられないようにしろ、とは言っておいた。なんだかんだいって、あいつも刑事だ。プロだから、用心できるだろう。まっすぐここに来るなんてバカなことせずに、迂回しながら来るだろう」と東城は答えた。
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