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第80話
話を続ける東城の表情は固い。「宮田の情報によると、光森の意識が戻ったらしい。所轄が話を聞いているそうだ」
その言葉に広瀬は3つ目のプリンを食べるのを中断した。
「本人は何があったか詳しくは話さないらしいが、命に別状はないそうだ」
よかった、と広瀬は思った。倒れていた光森の顔が思い出される。
「光森の財布から現金とクレジットカードが盗られてるらしい。ホテルで、強盗目当てで光森を襲ったとも思いにくいが、所轄じゃ強盗も視野に入れて捜査しているそうだ」
東城が宮田から聞いた話を続けてくる。
「それで、光森が殴られた後で、クレジットカード使った人間がいることまでわかってるらしい。よくあるファミリーレストランで食事して会計に使ったそうだ。金額からすると2~3人くらいじゃないかって思われるらしい」
そういいながら東城はテーブルの上で空になっている2つのプリンのガラスの器を見ている。
そこで広瀬は、光森のクレジットカードの話を東城にするのは忘れていた、ということを思い出した。
東城には今までのことをかなり詳細に説明したつもりだったが、光森が殴られたあたりからは曖昧な話になっていたのだ。
東城はまだプリンの空の器から目を離さない。
「お前、光森を襲った後、お前を追ってきた男の話してたな」
広瀬はうなずいた。
「そいつは、一人だったんだろ?」
それにも広瀬はうなずく。
東城の眉間にしわが寄っている。「その男が、光森の財布からクレジットカードと現金を抜いたのか?」
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