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第81話

広瀬は首を横に振った。 「まさか、と思うけど、お前がクレジットカード盗って、ファミリーレストランで食事したなんてことは、ないよな」 そう聞きながら、東城は大きなため息をついていた。 答えは聞かなくてもわかっているのだろう。 「どうして、光森のクレジットカードを?」 「金が必要だったんです」と広瀬は答えた。「逃げるのには必要です。光森は現金をほとんどもっていなかったんです」 「それはそうだろうけど、なんだって、カード使って飯食ってんだよ」 「それは」 広瀬は、口ごもった。 「お前、俺に会えなくて食事も喉を通らなかったんじゃなかったのか」 広瀬は何と返事したらよいかわからなかった。 「がっつりファミレスで食ってたんじゃないか」 東城の声は呆れている。 「それは、ホテルから逃げるのに必死で、気が付いたら動けなくなりそうだったんです」自分で言いながらも白々しい言い訳だと思う。 最後の方は小さな声になってしまった。 「どうしようもなく腹減ってたてのはわかるけどな。早晩、使ったの誰かわかるだろ。カード使った日時も店もわかってるし、ファミレスには防犯カメラあるし」と東城はブツブツ口の中で何か言っていた。「おまけにお前目立つんだ。あの派手なブランド物のシャツ着て、3人前くらい食事している綺麗な顔の男、って、店員はみんなお前のことを絶対に覚えてる。証言貰うの簡単すぎるくらい簡単だ」 東城はため息をついた。 「それで、クレジットカードは今どこにあるんだ?」 広瀬は急いで立ち上がり、部屋の戸棚に入れていたそれを出して東城に手渡した。

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