82 / 159
第82話
広瀬が差し出すクレジットカードを東城は指でつまみ上げ、カードに記載している名前をにらむように見た。
「こんな証拠がばっちりあるなんてな。ブランド物のシャツとこのクレジットカードがそろってる。うちにガサ入れされたら、一発でアウトだな」
「処分しますか?」
捨ててももう取り返しはつかないけれど、一応言ってみた。
それにしてもどう対策したらいいのだろうか。東城は怒っているのだろう。
それはそうだ。クレジットカードを盗んで食事をしたなんて、犯罪者以外なんでもない。
ところが予想に反して東城は静かに首を横に振った。
「これは、持っておこう。何かの役に立つかもしれないし、そうでなくても、光森のモノを勝手に処分するというのも、気が引けるからな」
ともだちにシェアしよう!