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第83話
広瀬が黙って立っていると、東城はクレジットカードを片付けた。
彼は広瀬の顔を見ると歩いて近づいてきた。
それからいきなり正面から両腕を背中に回され、ギュッと抱きしめられた。
小さい子供がぬいぐるみを抱きしめるように、ためらいなく、力をこめて。彼の大きな腕の中に自分が入り込んでしまった。
しばらく、抱きしめられた後、彼は広瀬を座らせ、自分も座った。大きな手で髪をくしゃっとなでられる。
「こんなバカバカしいことも、お前がいるからこそだな」と彼は言った。
顔を見ると笑顔になっている。広瀬の好きな魅力的な表情だ。
「過ぎたことをくよくよしてもしょうがないからな。おまえがここにいて、でかいプリンを3個も食ってるのみたら、今後のことについて悩んでるのなんて、無駄だって思えるよ」
そう言って唇の端に軽くキスをされた。
「プリン旨い?俺の分まだある?」
「この途中まで食べたのが最後です」と広瀬は答えた。
「だろうと思った。わかってて聞いたんだ」そう言って笑いながら今度はきちんとキスをされた。
身体に東城の身体がかぶさってくる。
キスをしながら、頭をなでられた。くしゃくしゃくるくる髪をかき回された。
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