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第95話

宮田は家の中をキョロキョロ見回し、聞いてくる。 「東城さんはいないのか?」 広瀬はうなずいた。 所轄に呼ばれて光森に会いに行ったことと、出かけたまま、まだ戻らないことを伝えた。 「やけに時間がかかってるんだな」と宮田は言った。「連絡は?」 広瀬は首を横に振った。 佳代ちゃんは腕時計を見た。「もう少しして連絡がなかったら、東城さんを呼んだ所轄に探りをいれてみるわ」 「なにかまずいことになってるのかな」と宮田が気を揉んでいる。 佳代ちゃんは答えた。「わからないわ。でも、東城さんのことだから、如才なく切り抜けるでしょう」 広瀬は、二人が買ってきたチーズケーキを切り分けた。キッチンには包丁が二本あったが、どちらも鈍く切りにくいものだった。 佳代ちゃんはチーズケーキの乗った皿を広瀬から受け取った。そして、コーヒーのカップを手に持ち、大きな目で広瀬をじっと見た。「今までどこにいて、どうやって戻ってきたのか、話をして」と彼女は言った。

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