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第97話
彼が言うには、気が付いたら病院にいて、警察も来て大騒ぎになっていたということだった。
光森は、ベッドに半身を起こして座っていた。顔色は悪く、頭には包帯が巻かれていて、体調は悪そうだった。
東城に会うと丁重に礼を言った。
「倒れているところを助けてくださったそうですね」
「はい」と東城はうなずいた。それから聞いた。「事件について話していただける、ということですが」
光森は答えた。「もちろんです。ですが、その前に、名前、教えてもらえますか」
「名前?」
「はい。ホテルで救急車呼んでくれた刑事さんがいるってことは教えてもらったんですけど、名前は聞いても誰も答えてくれなくて」
「そうですか」あえて教える必要性を感じなかったのだろう。そして、教えてもらえなかった名前を光森がわざわざ聞く理由は何だろうか。
光森は、東城の顔を疲れた目で見て、名前を告げられるのを待っている。
東城は自分の名前を告げた。光森は表情を変えなかった。自分から聞きたがったくせに、わざと感情を隠しているようだった。
「東城さん」と光森は名前を呼んだ。
それから、若い男とバーで会い話しかけられた。知らない人間だが、話し込むうちにいつの間にか部屋に案内していて、殴られたようだといったことを手短に話した。
なぜ、この程度の話を所轄にしないのか、東城には理解できなかった。
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