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第118話

いつの間に眠っていたのか、広瀬は、物音に目を覚ました。 ホテルの自分の部屋に人がいる。 反射的に手を伸ばして、手近に武器になるもの探した。何も準備しておかなかったのは油断だ。 狭いホテルの部屋の中、ドアからこちらにむかって歩いてきたのは、白猫 菊池 だった。彼は、青白い顔をし、口にはうっすらと笑みを浮かべている。 菊池の後ろにはアジア系の大柄な男がいた。黒髪を長く伸ばし後ろで結んでいて、首から肩、胸の筋肉が盛り上がっている。菊池の会社でも時々見かけた男だ。 広瀬は、ベッドボードに置いたスマホに目を走らせた。取ろうとして手を伸ばしたが大柄な男が先にスマホに手を置いた。 「広瀬くんの希望通り、迎えに来たよ」と菊池は言った。 広瀬は時計を見た。ホテルに戻ってから、まだ数時間しかたっていない。今はまだ宵の口だ。 「眠っていたんだね」 菊池への言葉が、出てこない。 「さすがの広瀬くんも、驚いた顔をしているね。わたしがシンガポールにいて、こんなに早くに来るとは思ってなかった?種明かしをするとね、シンガポールから連絡していたんじゃないんだ。光森くんがホテルで事件に巻き込まれて、君が行方不明になったと聞いて、すぐに、日本に来たんだよ。君を探すためにね」 菊池がそう説明する。 広瀬は、ドアの方を見た。ホテルはオートロックだったはずだ。「どうやってこの部屋に?」 菊池は苦笑し、「ホテルの鍵をあけることができるのは、君のお友達だけじゃないんだよ」と言った。

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