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第123話

「なにかあっても、すぐに助けられる.。見た目はただの絆創膏だから、疑われることもない」 「音声データもとれるって言ったが、リアルタイムで会話が聞こえるのか?」 「それは、残念ながら無理だ。これで音声をとると、雑音が多すぎるから、ノイズカットをしないとならない。それほど明瞭にはならないんだ。会話として理解できるところまで解析するには、時間がかかる」 「解析に時間がかかったとしても、菊池から犯罪の証言を引き出して録音できれば、役に立ちそうだな」と東城は言った。 そして、今度は忍沼に頭を下げ、礼を言っていた。 忍沼が恐縮するほどに丁寧なものいいだった。 広瀬が家を出る際に、東城が絆創膏を貼ってくれた。 その時、何を思ったのか彼が指を噛んだのだ。 血はでなかったが、少し内出血する程度の強さだった。 歯の痕の上から、彼が真剣な顔をしながら絆創膏を丁寧に貼った。何かの儀式かまじないのようだと広瀬は思ったのだ。 この絆創膏から発信される位置情報は、忍沼が常に確認すると言っていた。だから、今頃は、東城も忍沼も、広瀬がここにいることをわかっているはずだ。 何が自分の身に起こったのかを想像して、怖れたり怯えている場合じゃない、と広瀬は自分に言い聞かせる。 菊池から、犯罪の証言を得るのだ。 そして、菊池を捕え、竜崎に引き渡す。それが自分の役割だ。

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