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第125話

広瀬は、菊池が電話を終えると、質問をした。 「今回、光森さんが日本で投資を呼び掛けている記憶のデバイスは、滝教授が開発したものですよね」 「そうだよ。まだ、完全じゃないから、会社で開発を続ける必要がある。資金も必要だから、光森くんに日本で資金集めを頼んでいるんだ」 「滝教授が開発した設計図をもっていって、許可なく利用しているのではないですか」 菊池は心外だ、という顔をしている。「設計図を持っていたのは君だよ。わたしは君から設計図をもらっただけだよ」 設計図は誰かから広瀬のもとに送られてきたのだ。送り主が誰だったのか今でもわからない。 菊池が送ってきたのではないかと疑ってはいたが、違うのだろうか。 「その設計図が、滝教授から盗まれたモノであることはご存知でしたか?」 菊池は真顔で答える。 「さあ。盗んできたというのは初めて知った。君が盗んだのかな?」 「警察庁の研究所で開発していたデータは、どうしたんですか?」広瀬は別な質問をした。 「あれは、わたしの研究だ」と菊池は言った。「わたしのものだから、使っている。データを物理的に盗んできたのではないよ。わたしの頭の中にあるものを使っているだけだ。研究所に勤める前からの研究でもあるしね」 「あなたは、機密情報を海外で活用し、ビジネスしようとしている。それは、犯罪ですよ」 菊池はまじまじと広瀬を見ている。 「広瀬くん、そんな話をするために、わたしに会いに来たのかい?」 「そうです」と広瀬は正直に言った。「自首することをお勧めします」 「わたしを捕まえようと、本気で思っている?」 「一緒に、警視庁の担当課にいっていただければと思っています。無理やりお連れすることはしたくないです」 菊池は薄く笑った。 「何を言い出すかと思ったら、そういうことなんだ。でも、君にわたしを逮捕することなんてできないと思うよ。君は覚えていない、覚えていたくないんだろうけれど、わたしは、君を思い通りにできるんだよ」と菊池は言った。

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