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第143話
手がシャツの中に入り込んで、指が肌に直接触れてきた。体温以上のはずはないのに、東城の指先がとても熱く感じる。
手のひらで腹から胸を撫で上げられた。また、自分の中に熱がたまっていく。自分がはく息も熱い。何度空気を入れ替えても、身体の中から熱がふくらんでくる。
東城の指が乳首の先端をたどり、周囲を円を描くようにする。強い刺激ではないけれど、じんわりと触れられてところだけが、感覚がとがって浮いてくるようだ。
しばらく撫でられているうちに、突然、制御を失って、ひくっと身体が動き背中がしなった。
頭の中で何かが弾ける。
自分で自分を支えられなくなり、東城のシャツの袖をつかんだら、ソファーの上に寝かされた。
それから、東城の体重が乗ってくる。重みも暖かく広瀬を安心させた。
大きな手は、今度は、背中に回ってきた。シャツをまくり上げられる。背中に唇がおろされる。
唇で背中の皮膚を何度も挟まれ、背骨のくぼみをつたって舐められた。
「お前、肌の色白いけど、こうやって触れると薄く色づくんだ。特に背中が」
なめらかで、きれいな桃色だ、と言葉が続いていく。
舌で丁寧に舐められていく。優しい感覚だが、気持ちがいい。背中から腰までゆっくりと指と舌で愛撫された。
腰から下にかけて、中心が重い。時々、反射的に腰や足が反応し、ひくひくと動いてしまう。
スラックスの中に手が差し込まれた。既に立ち上がり濡れている性器を東城が手で包み込んでくる。上下に動かされ、先端を指で擦られる。
感じるままにいかせてしまおうという仕草だった。
耳の奥に東城の何かをささやく声が聞こえてくる。熱っぽい声。声に、手に触れられたところから、広瀬は溶け落ちた。
身体の力が抜けてソファーに沈んでいると、東城が背中と腰に手を差し入れてきて、抱きあげられた。
急に身体が宙に浮いて、「あ、ちょっと」と広瀬は言う。
もう少し、ここでじっとしていたい。それに、抱き上げられるなんて、恥ずかしいし、不安定で怖い。
「動くなよ。落っことしそうになるから」と東城は言った。「風呂に連れてってやるよ」
「自分で行けますよ」休んで気持ちを落ち着かせれば大丈夫だ。
「まあ、そう言うなって」と東城は言い、浴室に歩き始めた。
「一回試しに持ち上げてみたかったんだ。お前、体重かなり減ったから、今ならできる」と東城が言った。声にはやや自慢が入っている。
脱衣場まで来ると、ゆっくりとおろされた。
「ほら、大丈夫だったろ。あ、そうはいってもこの距離以上は無理だな。お姫様抱っこして二階にかけあがるとか、絶対に無理」
きっぱりと言われたが、誰もそんなことは頼んではいない。
「今みたいにふらふらして運ばれるのは落とされそうで、二度とごめんです」
「ふらついたりしてないだろ」と東城は言った。
「東城さんだって抱き上げられたら怖いと思いますよ」
東城は軽く笑って広瀬をいなし、不満を表した唇に軽くキスしてきた。
「お前を大事にしてるってことを示したいんだ。その力があるってことも」
広瀬はキスを返した。何を言いたいのかよくわからない。
「次からは別な方法で」と広瀬は言った。
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