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第149話

「広瀬さん、検査をさせてもらえませんか?」 「検査?」 「はい。協力していただきたい」と言葉は丁寧だが、強い口調で大男は言った。 「なんの、検査ですか?」 「薬の影響についてです。先ほども言いましたが、広瀬さんは、子供頃からこの実験に参加されている。大人になってからも摂取された。この薬があなたの身体や脳にどのような影響を及ぼしたのか、検査させていただきたい」 豊岡が広瀬に説明を始めた。 広瀬がどれほど貴重な存在かや、この薬の効果や副作用を知ることの価値について、先ほどカバンから取り出したファイルの中身もみせて説明をする。 熱心な口調だった。 「この薬が、危険なものと確定したら、勝手な流通は絶対に止める必要があります。ですが、既に、某国にはこの薬の情報が渡っていて、今後、悪用されるかもしれません。それを阻止するには我々も研究をする必要があるんです」 広瀬は話を聞きながら、ふと、佳代ちゃんを見ると、彼女の視線は大男のいかつい顔に注がれており、その表情は今まで見たこともないほど冷ややかだった。 「具体的にはどんな検査をするんですか?」 豊岡はうなずく。「まずは、血液検査を。それから、我々の施設に来ていただいて、精密検査や脳波や記憶力のテストを受けてください。そうはいっても、人間ドックプラスアルファみたいなものですから、それほど負担はないです」 どうでしょうか?と豊岡は言った。 「結果は、教えてもらえるのですか?」 聞き返した広瀬に、関心を持ってもらえたのだと思ったのだろう。豊岡は大きくうなずいた。 「もちろんです。協力していただけるのであれば、広瀬さんは我々の外部協力者として登録し、情報開示もします」 若い豊岡は前のめりになっている。 さらに彼はカバンをあけ、中から長方形の筆箱のようなケースを取り出した。 「わたしは、医師の免許を持っています。できれば、今日血液を採取させてもらって、後は、明日以降にでも」 ケースの蓋を開けると注射器が入っている。 「菊池に注射を打たれた後、できるだけ早くに検査をしたかったのですが、どこにいるのかもわからなかった。今、血液を採取させていただいたら、注射後にどの程度薬が残るのか、調べることができます。お願いできませんか」

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