2 / 9
第1話
朝から暑くて廊下に出るのさえも辛い……。それに、廊下に出た瞬間に、あの学年主任が教士を待っているのを見て、更に気持ちが沈む。
「教士先生。ちょっと」
「……はい」
教士は、見るからに苛立ちを醸し出した学年主任の態度に、またかと思いながら静かに後を付いて行った。
「ちゃんと聞いてますか!」
「……はい」
内容は身に覚えがない事だった。でも、反論しても意味は無いので黙って聞くしか無い。
説教は次の授業が始まるギリギリまで言われ続け、話しが終わる頃には目眩さえ感じた。
そして、次の教室に着くと、授業内で配る資料を手早く整理し始めた。開始前に終わらせないと、また鈍臭いと生徒から言われるからだ。
「なー、今日の花火大会何時に来れる?」
クラスの最前列に座る生徒が、自身の後ろの席に座る生徒にそう話し掛ける声が聞こえて教士の手が何故か止まった。
「うーん、塾終わってからだから19時30分くらいだと思う」
「えー、19時30分とか開始と同じ時間じゃん。あの公園通れば直ぐなんだから突っ切って来いよ」
「はぁ? あの公園通れって? ふざけんなよ! あんな男同士の発展場なんか通ったら、変な噂立つだろうが!」
「えー、早い時間だから良いじゃん」
「馬鹿。あそこは時間なんかかんけーねーんだよ。四六時中相手見付ける為に必ず人はいんだから」
「そ、そんなヤバイのあそこ!?」
「あぁ、警察さえも寄り付かないほど乱れた場所らしいぞ」
乱れた場所……その言葉に、教士は何故か動きが止まった。
そんな危険な場所がこの近くにあったなんて、今まで知らなかったのだ。
(そんな場所……あったんだ……)
いや、知ったとしても行くつもりはーーーそう思っていたはずなのに、教士はその夜、何故かその公園のベンチに座っていた。
ともだちにシェアしよう!