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第5話
目を覚ますと、隣でなつきがぐっすりと眠っていた。
(あれ…僕……)
そんななつきを見て、自分はいつの間に眠ってしまったのだろうかと考える。だが、抱かれている最中に意識が飛び、何も覚えてはいなかった。
(なつきよりも先に寝たんだ……)
その現実に、教士は申し訳なくなる。
「僕の服……」
教士は、そんななつきを起こさないようにと静かに起き、辺りを見渡してみた。
すると、ベッド下に落とされた衣服はきちんと畳んで一箇所に置かれ、持っていた荷物の隣に置かれていたのだった。
身体もベタつきがなく綺麗に拭われ、中に出されたそれも掻き出してくれたのか、出された時にあった違和感は全く無かった。
「なつき……」
見た目とは違い、面倒見が良い一面があるらしく、だから、異性にモテるんだなと思った教士。そして、男の自分にも……だ。
「ありがとう……」
隣で眠るなつきは、さっき本当に自分を抱き続けていた男なのかと思うくらい幼く、可愛い寝顔をしていた。
それは、この寝顔をずっと見続けていたい。そんな気持ちにさえなってしまうほどに……。
でも、この気持ちは告げてはならない。
相手には彼女がいるし、のんけだ。
そして、未来がある。
「恋い焦がれる……」
あぁ、これが……これが、今まで知りたくても知らなかった感情なんだ。
そう、気付きながらも、教士はなつきを起こす事なく、ホテル代だけを置き、静かに部屋を出たのだった。
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