※「穏やかなフタリの休日」のすぐ後のこと。 あの感触は、多分触れてはいけないものだった。 なのにどうして貴方は笑っていられるの？ もしかして「ヘタレ」とか揶揄されている貴方はニセモノなの？ 『今日の先発は、右肘の手術を経てマウンドに復帰した……』 たまたま付けていたテレビから流れるプロ野球のニュース。 どうやら今日の勝ち投手は2年ぶりの勝利だったらしく涙を流していた。 『2年前の秋季キャンプ中に怪我をし、右肘にメスを入れた。』 その選手の手術の痕が、とても似ていた。 ＿なんかさ、スポーツマンが怪我してリタイアとかだったらどんなにカッコよかったか…… そう言った貴方の顔、とても哀しそうだった。 俺は、貴方の笑顔や楽しいことしか知らない。 居心地の良い、優しい世界しか、知らない。 俺は、貴方の痛みや哀しみを分かち合えないの？ 怒りや苦しみを教えてはくれないの？ それは、実はとても悲しいこと。 「俺……智裕くんの恋人…なんだよね？」 貴方の気持ちが、一瞬、分からなくなった。 inspired song 「粉雪」/ASIAN KUNG-FU GENERATION