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ハグの日記念SS 「大好き」
※拓海 視点です。
「はぁ……。」
1人でいることが多い保健室、ついつい気を抜くとため息が出てしまう。
いつも仕事と育児と…と忙しない時間が多い所為か、こういう時間は色々と考えてしまう。
コテン、と机に突っ伏して窓の外を眺めると、終業のチャイムが鳴り、別棟での授業を終えた生徒たちがザワザワしながら出てきた。
チラリと時計を見れば、まだ昼休みまでは1限ある。
「はぁ……。」
最近、智裕 くんともゆっくり出来てない。
テスト前で俺が会うのを控えさせているというのと、クラスの江川くんにみっちり勉強を教えられているっていうのと……。
毎日のよう昼休みに人がいなければイチャイチャして…。
_拓海さん…ココ……俺と一緒に、ね?
何を考えているんだ!き、勤務中だぞ!
「だめだめ!しっかりしろ俺!」
頰をパンパンと叩いて、消耗品や薬品の在庫確認をしようと立ち上がった。
すると急にドアが開いて人が入ってきた。俺は何事かと思って身構えていたら、その人はいきなり俺に抱きついてきた。
「限界!無理!拓海さん不足で死ぬ!死因・拓海失調!」
ああ…俺の大好きな体温と匂いに包まれる。
「うそ……。」
どうして、この人は…。
「江川っち鬼過ぎ!拓海さんに会えないなら留年した方がマシ!」
ふて腐れたようにそう言う彼は、俺を一層ギュっと抱き締めた。
「ふふ…留年は困っちゃうなー。」
「拓海さーん…現実逃避くらいさせてよー。俺勉強ばっかでハゲそうなんだよ。」
「俺は勉強したけどハゲてないよ?」
「……拓海さんがハゲでも俺は好きだからね。」
「ありがと。」
俺も「大好き」という気持ちを込めて、愛しい人の背中に手を回して。
8月9日が「ハグの日」ということで…。
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