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春に現れた
※直倫が裕也に一目惚れした翌日の話(直倫視点)
春、桜の花びらも散り出した。
何も知らない土地、初めての道、新しい出会いしかない、不安などのマイナス思考が巡っていた。
だけど俺には希望が出来た。
道しるべになってくれた人がいた。
こんなにキラキラとしたことがあっただろうか。
出会ってからずっと離れない笑顔や声。
会話の中でわかったのは、あの人はこの学校にいるはずなんだ。そして土地勘も明るいところから先輩…2年生なのか3年生なのか。
もし同じ部活だったら奇跡の出会いになるかもしれないけど。
俺は慣れない街を知ろうと、校舎の最上階の窓を眺める。
「おっまえ、マジずりぃぞ!つーか顔キモい!」
「幾らでも言いたまえこの童貞くん。はーっはははは!」
「お前も童貞だろーがこの粗チン野郎!」
「どんぐりの背比べ。」
下の方から騒がしい声が聞こえた。そしてその中には探していた声がした。
その声のする方を見ると。
「いた……。」
届くはずもないのに、俺はその人に向かって手を伸ばした。
_貴方に触れてみたい。
そんな叶いそうにない願いを唱えた。
そうしたら、数秒後、貴方の視線が俺の視線にぶつかった。
「あ……。」
ふと、貴方が柔らかく笑った気がした。
その笑った目は、この世で一番美しく俺の視界に映った。
「大竹ぇ、お前早くしねーといちご・オレスペシャル無くなるってよ。」
「マジかよ!」
「大竹ー、俺のミルクティー買っといてー。」
「はぁ⁉︎金欠!無理!」
走り去っていって見えなくなる。
刹那、強く風が吹いて俺は思わず目を閉じた。
次の場面に貴方はいなかった。これが切ない、痛い。
この感情、多分、初めてだ。
「好意……なのか。」
俺の中では衝撃だった、「恋」という感情。
inspired song
「春雷」/米津玄師
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