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2年5組 学級委員長について
「あ、あの…江川 くん、好きです!付き合って下さい!」
智裕はクラスメートの片倉 と福本 と裕也 と購買でパンや飲み物を買って教室に戻る途中、他のクラスの女子が学級委員長の江川一起 に告白をしている場面に遭遇して思わず隠れてしまっていた。
「あ…あの…1年生の時からすごくカッコよくて…頭も良くて優しくて……ずっと好きでした…。」
「あ、ありがとう……気持ちは嬉しいけど……その、俺、他に好きな人がいるから…。」
「そうだよね…うん、気持ちを伝えたかっただけだから……。」
「ごめんね……。」
フラれた女子はパタパタと走り去っていった。一起が「ふぅ」とため息をついたら瞬間、4人は一斉に飛び出して一起を囲んだ。
「江川っち!今の子ちょー可愛かったじゃん!」
「江川ぁ、お前ばっかモテてんじゃねーよ!」
「知らねーよ。俺だって好きでモテてねぇ!」
黒髪の清潔なショートヘア、クッキリとした二重の猫目、通った鼻筋、177cmという高身長、色白、小顔八頭身の細身、そして学年首席、品行方正(元セレブ)、腕っ節も強い。
それが四高2年で一番モテている男、江川一起だった。
「でもさ、1年の2学期辺りからお前に告ってくるのって別のクラスとか学年の女子ばっかじゃね?」
一起も交えながら教室に戻りながら片倉がふとそんなことを口にした。
「そう言われりゃそうだな。」
「うちのクラスの女子って江川と普通に接してるよな。」
「それは同じクラスだから普通だろ。」
「でもさ、普通中身知ったらもっと好きになるパターンとかあるじゃん。」
「宮西みたいにゲスい中身ってわけじゃねーし、殺戮兵器も時々しか出ないし、てゆーか女子には基本的に出さねーし…何でだろーな?」
「……これは調査する必要が出て来たな。」
(最近すっかり忘れられた)裕也の情報屋の血が騒いだ。
「しなくてよくねーか?」
_2年5組の女子に質問です。江川一起は恋愛対象に入りますか?
①南 衣織 …吹奏楽部のイケメンハンター
「うーん、委員長ねー…入学したばっかの時は完璧で理想の王子様すぎてビビったし、あんな人が彼氏だったらなぁって思ったけど……1年の7月かなぁ?部活の帰りにコンビニ寄ったら江川くんがバイトしてて、レジ打ちに慣れなくてエラー出しまくってて、バイトのおばちゃんに助けてもらって子犬みたいに落ち込んでる姿がその辺の女子より可愛くてさぁ…それ見て以来、こう…母性本能をくすぐられるようになったかな?」
②古川 真紀子 …吹奏楽部のお淑やかな女子だが智裕には辛辣
「江川くん?あー、私なんかが彼女とか無理でしょー。顔だけならいいけど、江川くんって意外とおっちょこちょいだなぁって印象だから恋愛対象にはならないかなぁ。彼氏がヘタレとかおっちょこちょいって無理無理。この前もヨーコちゃんと一緒に職員室に提出物運んでる時に派手に転んでヨーコちゃんに介抱されてたもん。あれじゃあヨーコちゃんが彼氏でしょ?」
③井川 乃亜 …美術部のポニーテールの小柄な女子
「江川くん?…わ、私はそういう対象で見たことないかなぁ……カッコいいけど、放課後とか宮西くんとスーパーの特売のチラシを見たりしているのを見かけると…大変そうだなぁって。この前お肉が安かったからって鼻歌歌ってたのは可愛いなぁって思った。」
④高梨 優里 …文芸部、江川とはご近所さん。腐ってる。
「江川くんは恋愛対象に入らないでしょ。ていうかあの子萌えの塊だから。イケメンなのに残念ではないんだけど…その辺の女子より可愛いわよね。この前、購買で間違えてブラックコーヒー渡されて涙目で飲んでたし、冬に一緒にしゃぶしゃぶ食べ放題に行った時に中々食べないからどうしたのか訊いたら熱いの苦手で、しかもキムチスープだったんだけど辛いのも本当はダメなんだって……可愛すぎでしょ!ほんとやばい!ギャップすごすぎ!」
⑤里崎 蓉子 …江川と一緒に学級委員をやる入学以来の相棒。
「あー…江川くんね。最初は顔も頭も良くて、壁も作られてて、何こいつって思ってたんだけど、松田とか椋丞 たちがその壁をぶち壊したら、揶揄われ慣れてないのかすぐ反論するし、しっかり者なんだけど何でもないところで転んだり、椋丞とこの前喧嘩した時(※本編『さよならマツダくん』参照)も次の日に椋丞にチョコプリンをあげて謝ったり…椋丞が作ったお菓子とか幸せそうに食べたりするの見るとね…母のような気持ちになるよね。あの子の本性可愛すぎでしょ。」
⑥増田 琉璃 …文芸部、江川の秘密を知ってる。
「怒るから言わなけど、江川くんはうちのクラスの癒しキャラだからね。ほら、今もさパンを食べてるところ見なよ。隣の松田くんはモシャモシャって普通に片手にパンで片手は飲み物だったり宮西くん叩いたりしてるでしょ?江川くん、両手でパンをハムハムってハムスターみたいでしょ?あ、あとストロー噛んじゃう癖もあるのよ?あ、今日なんかホイップダブルクリームパンだから、口のとこにクリームついてるのに…気付かないの可愛すぎでしょ!」
裕也は一通り聞き込みをすると、一起の隣に立った。
「何だよ、大竹。」
「お前……性転換した方がもっとモテるぞ。」
「は?意味わかんねーんだけど。」
「あ、江川っち、口にクリームついてる!」
「え?あ…マジで?」
ペロッ
白いクリームを舐めとる一起の表情、仕草に、智裕たちは反応しかかった。
(え、江川っち何でこんなにエロいの⁉︎)
(江川って、こんなエロかったの⁉︎)
(大竹の言う通りに性転換した方がよくね?)
(一起が女なら俺イケるんだけど!)
「ん?何?」
首をコテンと傾げて一起は不思議そうに4人を見た。そして4人は一斉に一起から目を逸らして前かがみになった。
「は?何?シカトかよ。」
「「「「俺らちょっと便所行ってくる!!!!」」」」
江川一起、男に告白される日も近い……かも?
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