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第4話
「大丈夫…?」
「ひっ!」
反対側から伸びてきた腕が優を包み込んだ。
「ひ…あ!ああ…っ!」
「落ち着いて。大丈夫だから、ね?」
街灯の灯りもない暗がりで起こしたパニック。
そこに落ちる雷の音。
「怖い…っ、怖いよ、…っ、助けて、ゆき…っ」
「大丈夫、…大丈夫」
頬に触れる掌。
それは、不思議な感覚を呼び起こした。
「……っ、は、…ぁう」
「大丈夫…。鼻からゆっくり息を吸って」
すうぅ。
「上手だね、そう。それから、息をゆっくり吐いて」
はぁあ…。
「繰り返してみようか」
「……っ」
ゆっくり吸い、吐く。
その度に、抱き締めてくれる人の肌の香りが胸腔を満たしていく。
それは、決して嫌なものではなく、寧ろ安心で満たされる感覚だ。
「大丈夫」
震えている優を開いた袷(あわせ)の中に包み込み、稲光から遮断してくれて。
「大丈夫。もう怖くないから」
ゆっくり背中を撫でてくれた。
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