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第6話
何度か唇を啄み合ってから、雪が寺の境内へと真優を誘った。
「ここ、祖父ちゃんのお寺なんだ。
離れに僕の部屋があるから行こう」
「え、いいの?」
「勿論。僕の大事な優だもの。
着替えて落ち着いたら、家に連絡するといいよ」
風雨に当たらないように、屋根の下を選んで歩く。
何度かバイト帰りに山門で雨宿りさせて貰ってはいたが、境内へ入るのは初めてだ。
「ね、お寺って、出る…?」
「…出るって、…オバケのこと?」
「うん……」
「んん、どうかなぁ。
僕は見たことないよ。
出たとしても、祖父ちゃんや伯父さんがいるから大丈夫。
ここで怖い事なんか起きないし、起こさせない」
「う、うん」
途中で落とした懐中電灯を拾い、雪が振り向く。
「大丈夫。僕が保証するからね」
「ん…っ」
雷の怖さも、急に思い出した怪談の怖さも、振り向いた雪の姿を見たら引いていったような気がする。
幼い頃の儚げな天使の面影を残した、優しい表情の美男子がそこにいたのだ。
『て、天使みたいだったのに、成長したら滅茶苦茶イケメンって反則過ぎだよもう…』
雪がこんなに格好よくなっているなんて、真優は予想していなかった。
幼い頃の天使そのままの美少年に育っているのだと思い込んでいたから、意外な姿に見とれるしかない。
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