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第10話

真優の心臓が止まったあの日から、お互いに喪失感を抱えて生きてきた。 根治手術を受けて退院し、定期検診を受ける度に先生に確認をして。 「雪は大丈夫?」 「ゆうは大丈夫?」 どちらも手術は成功しているし今は健康だと聞いて安堵してはいたけれど、こうして現実に目の前にいるからこそ得る安心は違う。 隣合って座っていると、自然に手が触れる。 「雪の手、大きい」 「ゆうの手も大きくなったよ」 掌を重ね合わせて手の大きさを比べ。 そのまま、指を重ねてキュッと握る。 「嘘じゃないよね?現実だよね?」 「夢でもないよ。僕ら、ちゃんと生きてる」 トクトクと逸る鼓動。 懐かしさだったり、嬉しさだけじゃない。 漸く会えて、抑えていた思いが渦を巻く。 「ゆうは心臓が止まる前にした約束、覚えてる?」 「うん。 元気になったら、二人で花火を見に行く」 「それから?」 「………好きな気持ちがずうっと続いていたら、………その…」 「言って、その先」 「…………ずっとずっと好き同士でいれたら、……こいびとになる」 「………っ」 お互いに、どちらともなく重なる唇。 軽く触れただけで、積み重ねてきた想いが一気に膨れ上がった。 軽く触れたら、足りなくて。 やわやわと啄んだら、もう止まれなくなっていた。

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