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第3話「その気になって……」

* * *  いつでもエロイことしたいってことは、仕事中もムラムラしてたの? 俺、そんなの全然気にしないで仕事してたけど……司くん可愛い。  それにしても、この流れは抱かれるやつだよな?  熱い視線が確実に俺を誘惑している。 「本当はお前が犯されたいって考えてるんじゃねぇの?」  ソファに押し倒され、シャツの中に手が伸ばされる。  ……そうだ。『俺は役者。今日は少し控えめにいってみよう』なんて、いたずら心が芽生え始めた。 「やめて、それだけは……」 「え?」 「……そんなこと思ってない」 「……そう、それならやめる」 「……司くぅぅぅん!? ここは『そんなこと言って、本当はヤッて欲しいんだろ? 言ってみろよ……犯してくださいって』とか言ってくれるシーンじゃないの?」 「……」 「なんだよ! ……さっさと俺のこと抱いて!」 「お前はムードってものがないのか?」  司は片手で顔を覆いながら溜息を漏らす。 「でも、今の演技はよかった」 「まじで!」 「じゃあ、今日は可愛らしく恥じらいを持って抱かれて欲しいかな」 「わかった、やってみる」  期待で隠しきれない口角を思い切り上げる。 「俺、目閉じるから! 目閉じたら司くん襲ってきて!」 「……なんか、ガキと遊んでるみてぇ」 「え!?」 「なんでもない、目閉じろ」  少し膨れ顔で「なんだよ」と、文句を言いながらも素直に目を閉じる。 「……ッ」  シャツを捲し上げられ冷たい空気に肌が晒された。 「乳首起ってる」  薄目で胸元に目をやると赤い舌先がちらりと覗く様が見える。視界から犯されていく感覚。そっと胸板を舐められると腰が浮いてしまう。それを押さえるように足の間に膝が割って入った。 「……待って……当たって……!」 「ん? 何?」 「膝が……」 「それで?」  股間にグリグリと押し付けられ違和感は快感の波に変わっていく。 「ちゃんと言って」  下半身の刺激に気を取られていると胸の突起を強く摘ままれて厭らしい声が出てしまう。まるで俺を玩具にして遊んでいるかのように無邪気な笑みを向けられる。 「俺と出会った頃はこんな身体じゃなかったのにな?」 「言わない……で」 「最近服に擦れるだけで気持ちよくなってるだろ」  言葉とは裏腹に強い刺激が優しく撫でる仕草に変わる。物足りなさから下唇を噛み締めてしまう。 「ダメ。唇切れる」  空いた手で唇を撫で、そのまま貪り食べられるようにキスされる。 「ねぇッ……司く……下、触って?」  離れた唇は名残おしく透明な糸を引いた。  意地悪をするように胸から降りて横腹を這う指が太ももへと伸びていく。 「やぁだッ……はやくぅ」  手持ち無沙汰になっていた手を首に巻き付け、視線を合わせると思わず涙目になってしまう。 「あれ? 今日は恥じらいを持って抱かれてくれるんじゃなかった?」  次々と与えられる快感に演じることなどすっかり忘れていた。そんなことを考えている最中にも太ももの内側を焦らすようになぞられる。 「今の勇也はただのエッチな子」 「だって……むり……」 「……そんな可愛い顔して」  撫でている手を止め、ズボンをおろされる。早く触って欲しい気持ちから自分で大きく脚を広げてしまう。「うわ、大胆」と、嘲笑いながら股間に顔を近づけられると硬くなった性器をまじまじと見つめられ下半身が熱くなっていく。 「な、何」 「すげぇ、パンツの上からでも形わかる」 「や……! 見るな!」  途端に恥ずかしくなり、見られまいと脚を思い切り閉めようとするもグイッと抵抗を許されない力で阻止される。 「あぶね、閉めてんじゃねぇよ。開け」  強めの口調に胸が高鳴る。乱雑にパンツの端から手を滑り込ませ亀頭を掴まれると上から形を確かめるようにそのまま指先を使って性器全体を包まれた。先程とは比べものにならない大きな刺激に呼吸が浅くなり鼻に掛かった吐息が室内に響き渡る。  くちゅくちゅと音を立たせ、ぬめった液体を馴染ませるように扱かれると音がやけに厭らしくて喉を鳴らしながら刺激に酔いしれてしまう。  快感でわけが分からないままパンツをするりと脱がされると下半身が温かいもので包み込まれた。上下する頭を見ながら昇り詰めてくる快感に囚われる。 「ッ……ごめん」  顔をあげ、眉間に皺を寄せながら喉を動かす姿は再び下半身にクるが息つく間もなく脚を持ち上げられ、お尻の割れ目に舌が這い蠢く。 「!?……汚いから!」  答えが返ってくるわけでもない。 「……や、ぁ」  先程とは違う快楽に身を委ねる。 「ん……そろそろいいか」  下半身に感じる生温かいぬめりを内側に入れられる感覚に背筋がのけぞる。太い指が内側を弄りながら奥に進むも、肝心なところを外されてしまう。 「意地……悪……!」 「じゃあ、お願いして」 「……っく……はやく…司くんのちんぽでズボズボして……!」 「はは……かわいっ」  ずるりと引き抜かれる指に吐息が漏れるも、硬いモノが押し当てられると期待で身体が火照る。  次の瞬間、身体を貫く男根に恍惚の表情を浮かべた。  嗚呼、きっとこれが幸せというものなのだろう。好きな人に抱かれて、欲張る。  これ以上にない幸せだ。 * * * 「ぎゃあああ!」 「うっせぇなぁ」  カーテンから零れる日差しが温もりを届ける時間。 「腰……いだい……立てな……」 「はぁ? ……あ、でも今日オフだわ」 「へ?」  てっきり仕事があるものだと思っていた。最近は多忙だったからオフのことは頭から抜けていたのかもしれない。  腕枕をしてくれている司くんの空いた手がそっと頬にかかる。 「じゃなきゃ、昨日あんなに激しく抱かないだろ」  やっぱり、司くんは恥ずかし気もなくサラッとこんなことを言う。  だからこそ、俺もその気になって抱かれてしまうのだろう。    これからも、きっと。

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