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第10話
「は…痛ッ、くゥ…」
(…ヤバッ、発作だ…)
疲労蓄積で持病の発作が起き…
再び床に転がりながらヒキつる半身を抑え、痛みに耐える…
(薬…飲まなきゃ…)
そう思うが…
発作を抑える薬は隣の部屋の戸棚の上…
今の状態では、取りに行くことが出来ない、この半身麻痺が…一旦引くまでは…
「ッ…ぁ痛…」
最初の半身麻痺が起こって15分ほどして…ようやくヒキつった身体が弛緩する。
「…ハァ、ハァ‥ハ、ッ…」
発作が起こり、半身が麻痺すると呼吸もやりにくい…
荒くなる息を抑え、次の麻痺がはじまる前に、今のうちに薬を飲まなくては…
発作のマヒとマヒの間は、恐ろしい脱力感に見舞われるが、それをおして、慎重に起き上がり、痺れる手足を庇いながら薬のケースを取り、壁に背を預け…
薬を飲もうとする、が…再び右半身がマヒしはじめる。
「くッ…」
自由の効く左手で、流し込むように…液体の薬を飲み込むアキラ。
軋むカラダを抑え…
うつむいたまま、薬が効くのをただ待つ…
5分ほどして、やっと薬が効いてくる。
「ふぅ…っハァ、ハァ…」
身体の緊張が解け、再び強い脱力感が襲う…
このまま眠りにつきたいほどだが、全裸でもあるし、そういう訳にもいかない。
少しだけ休んで、ゆっくりと動きだす…
立ち上がり壁をつたい歩きしながら、服を一枚羽織り、部屋の窓を全部あけるアキラ…
2月であるためかなり寒い風が入り込んでくる。
「…寒」
呟きながら…
今度は煙草の始末と、床に自分の血液やら相手の精液やらが零れているので、先に破られた服と一緒に片付ける。
「…フロ」
かなり不快感が残る身体をどうしても洗いたくて、次に風呂へ入りに行く…
そう淡々と行動するアキラ…
まるで、犯された事実をアキラの中から消し去ってしまったかのように…
風呂から上がると…
残りの証拠品を片付け、換気を終え窓を閉めて…暖房を利かす。
そして…頭痛と吐き気のする気怠い身体をベッドへと横にする。
布団に潜り…
かなり身体に負担をかけたため、疲労が溜まっていたのか、すぐに眠りに入ってしまうアキラだった…。
《思惑と裏切り》終。
次章《隠しごと》へ続く。
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