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第13話

「待ってて、」 安心させるよう小さく微笑んで伝える。 「あぁ…」 アキラに言われたとおり大人しくソファで待つみずき。 アキラは奥の洗面台へ消える。 顔を洗った後、トイレに入り、便座を椅子がわりにして座って… 昨日の火傷痕を自分で確認する。 腕や足も、ぶつけられたり乱暴に掴まれたりして鬱血した場所が青くアザになっていた。 冬場で長袖着用しているため、みずきには隠せるが… 「っ…イテ、…」 押し付けられた煙草の痕… 「結構深いな…完治するまでに1ヶ月くらいかかるだろうな…」 ぽそっと呟いて… 「……」 同時にもどかしい胸の痛みを感じる。 (…当分、みずきとするのは無理だよな…) 火傷…エッチの時にみずきが気付かないはずがない… (タツみたいに乱暴だったら、気付かないんだろうけど…) みずきは、オレの苦痛に敏感だから… 絶対気付く… そして、怪しみ心配して聞いてくるはず… そうしたら、オレは、なんて答えたら…いいんだ? (…SEXもさせてあげれない…) 考えながら気持ちが沈んでくる。 (つまんないオレ…) 一番、みずきを満足させられる方法を失って…ただ尽くされているだけじゃ… きっと、耐えられなくなる… みずきと、一緒に暮らしていけるのも、そろそろ限界かも…しれない。 アキラは瞳を閉じて思う。 (みずきに昨日の出来事…伝えたらどうなるだろうか…) 出て行かなくてすむようになる? たぶんそれはない。 そんなことを話したら… みずきは確実にショックを受けるし、心配して夜間の仕事を辞めてしまうかもしれない… 余計な心配事を増やして、みずきの生活を崩してしまう。 そんな事になるくらいなら… オレが出て行った方がいいから…。 気持ちは固まったけれど… 実行にはなかなか移せないアキラ。 (みずきに、出ていく事を告げなきゃ…でも…) 生半可な理由じゃ…みずきは了解するはずないし、出ていくなんて話した時点で、強く止めにくるはず…。

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