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第29話

「ッ…く、ぅィッ」 暗闇の中… 一人、半身を襲う痛みと戦うアキラ… 発作は半身が強張り… 呼吸すらまともに出来ない… しかし永久に続く訳では無く、断続的に麻痺と弛緩を繰り返す。 半身の痛みが引いた時、普段なら多少身体の自由が利くようになるのだが… 今日は昼間の外出と、夜間も今まで立ち通しだった為か、身体に力が戻らなかった… もはや、アキラに動くすべはなく… 時間だけが、無常に過ぎてゆくだけだった…。 午後11時半… 何も知らず、みずきはアキラが待っているであろう我が家に、時間ぴったりに帰ってくる。 「鍵…?」 出掛ける時にかけた筈の鍵が開いているので… 不審に思うみずきだったが… 「ただいま…」 静かに言って部屋の中へと足を進める。 「…?」 部屋を見てさらに不信感が強まるみずき… 部屋の中が異様にちらかっている。 棚の上に置いていた物が床へ落ち、家具の位置がズレている。 「…!」 みずきはなんとも言えない嫌な感覚が走り、アキラを確かめる為に寝室へ走る、 「アキラ!?アキラッ!?」 ベッドの上、居る筈の存在は、やはり… そこへはいなかった… 「嘘、…どこへ?何故…」 頭の中が真っ白になり…混乱して呟いてしまうみずき。 ふと、足元に目をむけると…数本、煙草の吸い殻がバラバラと落ちている。 「…!?」 あきらかに何者かが侵入した形跡… 「アキラは…」 連れ去られてしまったのか!? みずきは、とっさにそう思い探しに出ようとするが… 「!…コート、ない…?」 アキラが外出する時に身につける物が、一式ないのが目に入る。 アキラは自分から出て行ったのか…?

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