49 / 144

第49話

「なにもいらないから、隣にいて…な」 みずきを休ませるつもりで囁くアキラ。 「あぁ、傍にいるから…」 アキラに少しでも必要とされたことが嬉しく思え、笑顔で答えてアキラに寄り添い座るみずき。 そっとアキラの肩に手を回し抱き寄せる。 触れるとやはりアキラの身体はまだ熱く感じられ… 熱が高いことが分かる。 しかも、時折、咳がでるようになっていて… 声もかすれているアキラ…。 「今日、仕事夜7時からだよな?」 みずきにポツリと聞いてくる。 「あ…あぁ、…でも、アキラ…調子が悪いなら俺は休んだっていいんだ、代わってもらえるから…」 駄目もとでもう一度言ってみる。 「駄目だって、他の人に迷惑かかるだろ、オレ中心で考えるのやめろよな、もう平気なんだから…」 やはり怒ったように答え、表情が変わる。 「……、わかった…」 これ以上粘ってもアキラは怒るだけ… みずきはそう感じて、返事をする。 「心配しすぎなんだよ…」 ぼそっと付け足して言う。 「……でも、」 みずきも心の中の思いが漏れそうになる。 「何?」 刺すようなアキラの言葉に… 「いや…、6時半には家を出るから…無理はしないようにな…」 気遣う言葉でごまかすみずき。 「分かってるって…」 みずきの言い分を抑えて、安心したように微笑み答える。 「……」 アキラの機嫌はなんとか立て直したが… みずきはやはりまだ複雑だった。 時間まで他愛のない会話をして過ごす二人…。 お互い話せないキモチを隠したまま……時間は過ぎていくのだった。 《確信》終。 《悪夢の再来》に続く。

ともだちにシェアしよう!