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《悪夢の再来》
時刻は夜6時半…
仕事は休みだが、アキラに言うことが出来ないまま…
時は経ってしまった…
みずきは、仕事に行く振りをしてアキラの様子をうかがうことにする。
何事もなければそれでいい…
しかし、何かあれば助けに入れるように…。
「じゃ…行ってくるから、休んでいろよ…」
「もう、平気。心配ばっかしてないで仕事しろよ」
いつもと変わらない見送り…
だけど、特別な見送りだ…
みずきが仕事に行ったら…
オレはここを出る。
さよならだから…
「あぁ…」
頷き…柔らかくキスを交わすふたり。
「バイバイ…」
何気に手を振って見送るアキラ。
アキラの見送りを受け…
家を出るみずき。
仕事先には行かず、アパート前の道路を渡り向かい側にある駐車場へ行き自動販売機で飲物を買って横のベンチへ座って様子をみることにする。
ここならあまり目立たずアパートの様子がよく分かるから…
アキラに貰った携帯電話を眺めながら…
何事もなく時間が過ぎるのを願うみずき…。
一方、みずきを送りだし、アパートに一人きりになるアキラ…。
みずきが出掛けて5分ほどして動き出す。
最小限の物を鞄にまとめ、出ていく準備をする…。
持って行けないものに関しては後で考えることにして…
「……これ、」
みずきに貰った指輪を見つめ…
少しだけ悩むアキラ…
しかし、指にはめてあるそれを、すっと取り…置場を探す。
寝室のベッドの枕元まできて、そこへ、一万円札十枚と共に置いていく…
お金は指輪代と宿代に…。
ズルズルと過ごしてきた家に別れを言い、二度と帰らないつもりで家をでる。
荷物を入れた鞄をいったん置いて、入口のドアの鍵をかけようとする。
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