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第55話
「サクヤ…声が…」
風邪のせいでかすれた声のアキラに鋭く気付くタツ。
「まぁ、それでも案外イイのが撮れるかもな…サクヤ」
ヤタに拘束されているアキラの顎をクイっと上げ…その綺麗に整った顔を見つめる。
「…このッ」
体調が悪いアキラなのに、まだ撮影しようとするタツが許せず、軋む身体を無理矢理起こしアキラを助けようと、タツに向かっていくみずき。
「邪魔だッ!」
少しイラ立ったように怒鳴り、みずきに回し蹴りを仕掛ける。
「くっ!」
みずきは腕でそれを受け止めタツに拳を向けるが…
ガシッと後ろからカイに身体を抑えられる。
「オラッ無駄なんだよッ黙って見てろ!」
動けないみずきを容赦なく殴り蹴るタツ。
「ッみずき!…やめろッ!タツ、みずきは関係ないだろッ!」
一方的に殴られているみずきを見ていられなくて、アキラは止めるように叫ぶが…
「あぁ?向かってくるから相手したまでだ、こいつが居ちゃ撮影にならねぇだろーがッ!」
タツは苛々状態のままアキラに言い返す。
「…みずき、もう…いい、お前ひとりでどうにかできる状況じゃないから…」
敵は大の男4人、しかもタツはプロボクサー並に強いし狂暴だ…
いくらみずきでも勝てるわけない…
ただ怪我を増やすだけ…
「ッアキラ…俺は、」
助けたい…
目の前で奪われるのをただ見ているだけなど…
できるわけない!!
カイの拘束から抜けようと暴れるみずき。
するとタツがまたみぞおちを狙い、みずきを2発殴る。
「ぅッぐ!」
「カイ!これで縛っとけッ!」
うずくまるみずきを見て、タツは袋からロープのような紐をカイに投げ渡す。
「ッス、」
カイは短く返事して、みずきを強く抑えこみ、腕を後ろに回し、手首を紐で頑丈に縛る、そして同じように足首も素早く縛る。
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