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第85話

なんで… こんな、巻き込まれて…痛い目にあわされて… オレは勝手に出て行こうとまでして… また、みずきを裏切ったオレなのに… こうして、いっしょに洗ってくれて… また触れてくれる… 「……」 何も求めず…そばに居てくれるみずきを… ただ…見つめ返す。 「さ、…早く服を着よう、身体が冷えたらいけないから…」 そっと触れてきた手を離さずに… 高鳴る胸の内を隠して、優しく促すみずき。 パジャマを取り、一人で着ようとするアキラを手伝う。 服が着れたら… 「ベッドまで歩けるか?」 立っているのもやっとのようなアキラを支えながら、そっと聞く。 「…ソファに」 ぽつりと言うアキラ… 「ソファ?わかった…行こうか」 そう、アキラを抱きかかえようとするみずきだが… 「…いい、歩く…から」 手で避けながら…歩き出す。 ベッド…枕元に置いたお金と指輪… 今はまだ見せたくない… うまく話せそうにないから…。 ふっとそれだけ思うアキラ… それ以上は思考が続かない… 歩くことに集中する。 「……」 支えないとやはり歩行不安定だ… 瞳も虚ろで、視線が定まっていない… コトバを紡ぐのも億劫な程… 体力的にも相当、辛そうなアキラ… そんなアキラを早く休ませてやりたくて、なんとか辿り着いたソファに座らせ… みずきは隣に来て、アキラの濡れている髪をしっかりタオルで拭いて乾かしていく… そのみずきの行動に黙って流されている。 もう何も考えられない… 「……アリガト」 ぽつりと言うアキラ。 「いいよ、全然…」 すぐさま答えるみずき。

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