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第86話

「…臭う?」 またぽつりと呟く… 「…大丈夫、臭わないよ」 少し臭いを嗅ぐしぐさをして答えるみずき。 「…よかった」 瞳を閉じて、みずきにもたれかかりながら呟く。 「熱を測ろう、高かったら病院に行かないと…心配だから…」 みずきは、アキラの体調を危惧して言うが… 「……病院は…行かない…」 「アキラ…、分かった。まず熱測ろう…」 心配だったが、とにかく熱を測ってみてから、と思い返事するみずき。 体温計をアキラの脇に挟む… 「……」 ぐったりして…全身震えているアキラに毛布をかける。 しばらくして熱が測れた… 「っ!!」 その数値に驚愕する。 (…よ、41、2…) 一瞬固まってしまったみずきだが… 「アキラ、41度以上あるから、病院行こう!」 みずきは慌ててそう思うが… 「…嫌だ」 アキラは、首を横に振る。 「アキラ…」 困り果てたように名前を呼ぶ… 「…行きたくない、誰にも会いたくない…」 かすれた声で、そんな言葉を呟く。 「…アキラ、うん」 酷い目にあったアキラ… 身体の傷も…本当は誰にも知られたくないこと… アキラの…その思いも胸が痛むみずき… 今、無理矢理は連れていけない… 「くすりの…ケース、とって…」 アキラは息をついてみずきに頼む… 「あぁ、待ってろ…」 アキラをソファに座らせたまま、言われた通り数種類の薬が入った箱を取る。 そして、ついでに水を汲み、急いで寝室から布団をひとつ取ってくる。 「はい…これを飲むのか?」 アキラは自分で粉の薬を3種類ほど選んで出している。 アキラに水を渡し、みずきは薬を一つずつオブラートに包んでアキラに手渡す。 緩く頷いて薬を飲みほすアキラ… まだ、微かに身体が震えている。

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