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第88話

「…っ」 その手を抑えて、微かな痛みに集中する… しばらくして…なんとか、左手の筋緊張だけで大きな発作は起きなかった。 ふぅ…と息をつき安心する。 (コレで発作なんか起きたら、みずきに迷惑かけまくるからな…よかった…) 自分で麻痺が分かるってことはだいぶいい…。 アキラは、ぐっすり眠るみずきを見上げ…しばらく見つめる。 「…すずか…みずき」 ぽつりと小さな声で呟くようにフルネームを呼ぶアキラ。 「って、けっこうキレイな名前だよな…ヘタすりゃ女優サンの芸名っぽい…」 薄く笑いながら、そんなコトを一人で呟く… 「…くすのき…あきら」 自分の名前も言ってみる。 「ふ…平仮名にすると文字数オレの方が多いのに…漢字だと画数みずきの方が10も多いんだな…」 一人で比べて面白がっているアキラ。 「…けっこう頭もしっかりしてきてるよな…画数とかすぐ分かるんだから…」 そう呟き続けて… 「熱下がったかな…昨日は41度あったらしいから…あの時は何も考える余裕なかったな…」 そういいつつ、ゆっくりとみずきの膝から頭を上げる。 少しめまいがしてソファに座りこむが… みずきは、すーすー眠ったまま…。 小声でも、あれだけしゃべって起きないということは… 熟睡してるんだな、と確信して頭を上げたのだ…。 一応、熱を測ってみる。 「…38.7か、昨日より下がったし…行動もできそうだよな…」 まだフラつく頭をソファに沈めつつ… そんな事を思う。 ここから… 出て行かなくちゃ… でも、その前にみずきの手当していきたい… 手首や足首も擦れたように血が出ていて痛々しい… 顔だって結構なぐられて… 「ッ…」 考えていると、また…左腕が痺れて痛みだす… 筋緊張がアキラをおそう。 細腕の筋肉と筋肉が離れるようにひきつり…痛みをともなう… しばらくして、またそれは治まり… 「っ…イテテ、ふぅ…」 それでも半身の発作よりは、かなり楽なのでホッとする。

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