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第89話

「…自分じゃあんまりどーってコトねぇつもりだけど、身体は素直だな…もうゲンカイ近かったってコトか、オレも…」 たぶんヤられてる時も今のような麻痺はおこってたと思うけど、高熱で分からない程、オレ自身マヒしてたんだな… 今はマシだ…。 不意に…肩まで伸びた淡い栗色の髪をかきあげ…そのまま、くしゃっと強く掴む… タツの奴…みずきにまで怪我負わせやがって… みずきに見せたくない姿、たくさん見せてしまった… でも、みずきは同業者だったから… アレは撮影だから… いいよ、もう… 考えていたけど、自分の意志でそれをやめるアキラ。 考えると…胸が苦しくなってきたから… (…平気、なんともない…) そう言ったら、そんなことはないと言ってくれたみずき。 オレは泣くのが嫌だから… 忘れたフリをするんだ… あんなコト、本当は思い出すのもツラいから… 泣いて、愚痴を言って、どうにもならない事を他人にぶつけてしまうから… 自分も、相手も痛いから… 忘れて…無かったことにする… (本当に癒されはしないのに…) つらいことを…打ち明けられる友人もいなかったオレには、自分で自分を癒すしかないから…。 かなり前…ルードにフラれた時… はじめて本気で他人(みずき)に自分のことを話してしまって… 同情してもらって… みずきだって、オレがこんな容姿じゃなかったら相手にもしてくれなかっただろう… それを実感した日だった…。 告白されて、愛してるって言われて… 普通なら嬉しいんだろうけど… オレには… 「ぅ…ッ、」 考えの途中で、今度は右足が全体的にヒキつりマヒする。 これもアキラは、ただ時が過ぎるのを待って、良くなるのを待つ。

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