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第94話
「…それに、ここはタツたちに知られているから…居る訳にはいかないんだよ」
アキラは、そんなみずきの瞳から逃げるように視線をそらして言う。
「…アキラ」
タツたちから守りきれなかった自分…
それを思うと何も言えない…
出て行って欲しくないけれど…
「……」
アキラは不意に立ち上がり奥の寝室へ消える。
「アキラ?」
何かとついて行こうとするが…
アキラはすぐに戻ってきて…
「はい、本当は昨日…出ていくつもりだったから…」
そう手渡されたものは…
「なッアキラ、これは…」
現金十万円とクリスマスにプレゼントした指輪。
「…いい機会だから…別れよ、オレたち…」
静かに発せられた言葉…
「オレは、独りの方がいい…」
みずきにも誰にも迷惑かけたくない…
こんな怪我…二度とさせたくないから…
「…独りに、させられる訳ないだろう…」
なんだかいつもより頼りなく小さく見えるアキラ…
そっと右腕で抱き寄せるみずき。
「俺はアキラの傍にいたい…それで、アキラに愛してもらえるような人間になれるよう努力したい、昨日のような失態は…二度と見せないよう、アキラをちゃんと守れるように…」
「……」
また…しばらく沈黙するアキラ。
ぽつりと言葉を伝える。
「別に…守ってほしいなんて…思ってない…」
「アキラ…」
「少し、考えたいんだ…ひとりになって、お前のことも…これからのことも…」
視線を下げ、そう言葉を続ける。
「……」
「指輪も返す…その金は色々世話になったから…」
「受け取れない…俺は何も世話なんかしていない…指輪も、アキラが持っていてくれ…返されるのはツラいから…」
首を振り、アキラに精一杯言うが…
「なくすかも…それでも?」
そっと瞳を重ね、試すように聞くアキラ。
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