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第99話
「…細い腕ですね、ちゃんと食べてますか?」
採血の準備をしながらアキラの腕を見て首を傾げ言う健次。
幼い頃から医者にかかっていたアキラ…
採血など慣れたもの…
大人しく腕を出してポツリと答える。
「食べてるよ…みずきが食べないとうるさいから…」
ルードが出て行って独り暮らししているときは、抜いてたこともあったけど…
「そうですね…鈴鹿さんはしっかりされてますから、アキラが一人で暮らしている時は色々心配していたんですが…今は安心出来ます」
話しながら、慣れた様子で採血用の針を腕にさし、アキラの血液を採血専用容器に3本ほど採取する健次。
その医療行為には諦めた様子だが、話しにアキラはやや不本意そうな顔をする。
「はい、いいですよ、結果を出しますから熱を測って、少しアキラの病室で待っていて下さいね…」
針を抜き、アキラに伝える健次…
『アキラの病室』とは、アキラがいつでも入院できるように一般病棟から離れた場所に、健次がつねにアキラ専用の個室を用意しているのだ…。
普段は健次の仮眠室として使われている。
「はい…すみません、忙しいのに余計な手間とらせて…」
アキラは頷き、心配をかけてしまった事も含めて謝る。
「謝らなくてもいいんですよ…そうですね、熱が下がったら犬達に会いにいってやって下さい、元気にしてますから…」
そう微笑み伝える健次。
「…ありがとうございます」
優しい健次にポツリと礼を言う。
「いえ…ではまた後で…」
いつも通り会釈して行く健次に笑顔を返し…
言われた病室へと歩いていくアキラ。
取りあえずみずきの怪我が軽傷で安心した…
ただ、これからのことを考えて…みずきとも話しをしないといけない。
『アキラの気持ちを聞きたい…』
みずきの言葉…
気持ち…ココロ…
考えれば考えるだけ苦しくなる。
だから、まっすぐ必要としてくれるアイツを避けて…
逃げて…あやふやにする…
オレのしているコト…
勝手だって、分かってるけど…
自分の気持ちを問われても…答えられないから…
これ以上続けられない…
終わりにしたい…
すべて…
「やっぱり…自分勝手…」
辿り着いた病室で…独り、そう呟くアキラだった。
《病院へ…》終。
《見えない心》に続く。
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