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第106話

さっき触るなとまで言っていたアキラに… そんなことを聞かれると食べさせて貰えるのかと、心の端で期待してしまうみずき… そんな訳はないのだけれど。 「でも片手で作るのは難しいよな…」 アキラは一人首を傾げる。 アキラがやんわりとだが心配してくれているのが伝わり少し嬉しい。 嫌われた訳ではないから… 「俺一人なら作らなくてもコンビニの弁当でいいから…」 「そっか…でもそればっかりは飽きるだろ、ルードに連絡してやるからたまにウマイもん作ってもらって食えよ…」 出来るだけオレのことを考える時間を減らさせるために、ルードに頼んでヨシとか連れて食事でもすれば… すぐには無理でも離れて暮らすことに慣れてくれるだろうし、そう願いたい… 別にみずきを傷つけたいわけではないから… 本当は… 誰一人として傷つけたくはなかった。 自分が、みずきにだらだらと甘えていたせいで、結果的に怪我を負わせることになって… もう、そばにはいられないと… そう、思ったから… そんな胸の内を隠したまま… いつも通り話かけるアキラ。 「…ほら、せっかく食事出してもらったんだ、食べようぜ…ここの食事は案外うまいから…」 マイペースに装いアキラは、自分の食事を約半分ずつみずきに移し、量を調節しながらうながす。 「……」 冷たかったり優しかったり… アキラの態度の変わりようについていけないみずきだったが、言われたとおり席について食べはじめる。 その後も普段と変わりなく会話するアキラとみずき。 ただ、二人の間に接触がないだけで… あまりにアキラがいつも通りなので… ふと忘れた振りをしてアキラの手に触れようと手を伸ばしてみるみずき。 するとアキラは何も言わずスッと手を避ける。 自然な動きで… すぐ、やらなければ良かったと後悔する。 やはりあの言葉は本気で… 触れられたくないと言ったアキラの心は本物だったから… 好きな人に避けられるのは…とても辛い… これ以上避けられたくない… その思いから、みずきは触れたいという気持ちを心の底に抑え込む… それでもアキラと過ごす時間は特別なものなので、何気ない会話をしてでもあっという間に時間が過ぎてしまう。

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